これまで構造化データの主な価値は、Googleの検索結果で星評価やFAQの展開表示といったリッチリザルトを獲得しやすくすることにありました。しかしAI検索の時代を迎え、その最も重要な役割は変わりつつあります。Webサイト上の事実を、機械が曖昧さなく理解できる形式でChatGPT、Perplexity、Google AI Overviewsへ直接渡すことです。構造化データがなければ、AIは文脈から推測してブランドを説明するしかありません。整備されていれば、校正済みのファクトシートを渡すように、正確な情報を提示できます。とりわけB2B SaaSでは、導入前の比較・検討が「10本の青いリンク」ではなく、AIとの対話の中で行われる場面が増えているため、重要性は一段と高まっています。
技術的にいえば、構造化データとはページ内に記述するJSON-LDです。scriptタグで囲んだJSONを使い、そのページが何についてのものか、どの種類に属し、どのような属性を持つのかを示します。JSON-LDはページ本文と分離されているため保守しやすく、AIクローラーも解析しやすいことから、Googleが最も推奨している記述方式です。B2Bサイトが最初に対応すべきなのは、Organization、Product、HowTo、Articleの4種類です。実装に入る前に、構造化データがAIに対して果たす役割を整理しておきましょう。
- 曖昧さをなくす:「Tentenは会社である」と機械へ直接伝え、商品名や個人名ではないことを明示します。文脈から推測させる必要がありません。
- エンティティのつながりを確立する:sameAsを使って公式サイト、公式コミュニティ、第三者データベースを同一のエンティティにひも付け、AIが同名企業と混同するのを防ぎます。
- 信頼できる項目を渡す:設立年、サービス種別、連絡先などの事実を決まったフィールドに格納すれば、本文中に埋もれさせるよりもAIが引用しやすくなります。
- 情報抽出の負荷を下げる:AIがページ全体のHTMLを読み解かなくても、整理された事実を取得できるため、回答に採用される可能性が高まります。
Organizationスキーマ:まず「誰なのか」をAIに認識させる
4つのスキーマの土台になるのがOrganizationです。ホームページに配置し、サイト全体で共有することをおすすめします。ナレッジグラフ上に明確なエンティティの基点ができ、その後に追加するブランド情報をひも付けられるようになるからです。ここで最も多い問題は、フィールドの不足ではなく、同じ会社を場所ごとに異なる名称で記載してしまうことです。たとえばホームページでは「Tenten GEO」、会社情報ページでは「Tenten」、フッターでは「Tenten Inc」といった表記の揺れです。name、logo、URLは、LinkedIn、Google Merchant Center、各ソーシャルプラットフォームの表記と一字一句そろえる必要があります。必須・推奨フィールドは次のとおりです。
- name:会社の正式名称。サイト内と各プラットフォームで完全に統一します。大文字・小文字の違いも放置しないでください。
- url:公式サイトのメインURL。
- logo:公式ロゴ画像のURL。AIが生成するブランドカードなどで使われます。
- sameAs:LinkedIn、公式コミュニティ、Crunchbase、Wikidataなどへのリンクをまとめた配列。過小評価されがちですが、GEOでは特に重要なフィールドです。
- contactPoint:カスタマーサポートや商談窓口の連絡先。AIがサービスを推奨する際に、問い合わせ方法まで案内できるようになります。
- description、foundingDate、areaServed:1文でまとめた企業の位置付け、設立年、サービス提供地域。入力できる情報があれば設定します。
Productスキーマ:AIが商品・サービスを説明できる状態をつくる
SaaSではProduct、より厳密にはSoftwareApplicationタイプを使うことで、何を提供し、いくらで販売し、利用者からどう評価されているのかを構造化できます。ユーザーがAIに「おすすめのB2B向けGEOツールはありますか」と尋ねたとき、Productを設定したページがあれば、AIは情報を効率よく取得できます。たとえばプランをトライアル、スタンダード、エンタープライズの3段階に分け、offersで明示しておけば、AIが価格帯を判断しやすくなります。主なフィールドは次のとおりです。
- name、description:商品・サービス名と、内容を端的に示す1文の説明。
- offers:価格、通貨、プラン。料金を公開している場合は設定しておくと、「いくらかかるのか」といった質問にAIが答えやすくなります。
- applicationCategory:BusinessApplicationなど、ソフトウェアのカテゴリー。
- aggregateRating、review:総合評価と個別レビュー。
aggregateRatingとreviewの扱いには、特に注意が必要です。Googleは、自社を自社ページ上で星評価する、いわゆる「自己採点」のレビューマークアップを明確に禁止しています。自社ページに会社情報を掲載し、そこへ自ら5つ星評価を設定することはできません。違反と判断され、深刻な場合はページ全体のリッチリザルトが表示されなくなる可能性があります。評価には、実在し検証可能な第三者レビューまたはユーザーレビューを使用してください。偽の評価を載せるくらいなら、空欄にしておく方が適切です。

HowToスキーマ:手順コンテンツに効く諸刃の剣
意外に知られていない事実ですが、Googleは2023年9月に、HowToのリッチリザルトを検索結果へ表示することを終了しました。つまりHowToを設定しても、デスクトップの検索結果に手順の展開枠は表示されません。そのためHowToはもう不要だと思われがちですが、実際には価値を発揮する場所が変わっただけです。「Googleでリッチリザルトを獲得する」ためではなく、「AIが手順を正確に抽出できるようにする」ためのものになりました。もともと段階的な手順を説明するコンテンツなら、各ステップ、使用するツール、必要な材料をHowToで明示しましょう。言語モデルがプロセスを説明し直す際に、順序を推測せずに済みます。
Articleスキーマ:E-E-A-Tを機械可読なフィールドに落とし込む
ブログ記事、ホワイトペーパー、資料ページには、いずれもArticleスキーマを設定すべきです。目的は、単にGoogleへ「これは記事である」と伝えることではありません。著者、公開日、更新日といった信頼性のシグナルを、決まったフィールドで示すことにあります。AIエンジンが引用元を選ぶ際には、誰が書いたコンテンツなのか、最近更新されているかが判断材料になります。著者が匿名で、執筆時期も不明なコンテンツは、引用される可能性が明らかに低くなります。重要なフィールドはheadline、author、datePublished、dateModified、publisherです。authorには名前の文字列だけを入れるのではなく、専門的な経歴やsameAsを持つPersonタイプのエンティティをひも付けることをおすすめします。これにより、E-E-A-Tにおける専門性を単なる標語ではなく、機械が検証できるデータへ変えられます。
顧客プロジェクトで確認できる傾向は一貫しています。エンティティのマークアップが整い、著者情報が明確なページは、テキストしかなく構造化データを持たないページと比べ、AI回答の中で正しく言及される割合が明らかに高くなります。— Tenten GEO
よくあるミスと、着手すべき順序
- マークアップとページ上の表示内容が一致していない:ページに存在しない評価やFAQをマークアップすると、Googleに操作行為と判断され、深刻な場合はサイト全体の評価が下がる可能性があります。
- 必須フィールドが不足している:各スキーマには必須プロパティがあります。不足していれば検証ツールでエラーとなり、AIも完全な情報を取得できません。
- JSON-LDに構文エラーがある:カンマが1つ抜けている、括弧が閉じていないといったミスだけで、マークアップ全体が無効になります。しかもブラウザは警告してくれません。
- ページごとにエンティティ名が異なり、機械が同じ会社を複数の企業として認識してしまう。
実装したら、まずGoogleのリッチリザルトテストとSchema.orgのバリデーターを使い、構文が正しく、必須フィールドがそろっていることを確認してください。ただし、検証に合格しただけでは十分ではありません。本当の確認作業は、AIに自社ブランドについて質問し、エンティティを正しく解析できているか、ページ上のフィールドを参照しているかを確かめることです。優先順位も明確です。まずホームページにOrganizationを実装してsameAsを整備し、次にコンテンツページへArticle、商品・料金ページへProductを追加します。HowToは最後に、適したコンテンツにだけ使用してください。何が不足しているのか、AIが自社を正しく認識しているのか判断できない場合は、30分のGEO診断で確認できます。実際に想定される質問を使い、構造化データの不足箇所と、対応すべき順序を明らかにします。



