ChatGPTやPortexityに、「契約する価値のないSaaSツールはどれか」「使いやすく長く使えるサービスはどれか」といった台湾特有の質問をすると、ブランドの公式サイトではなく、DcardのスレッドやPTTの投稿が参照されることがあります。これはAIの誤作動ではありません。AIが「誰の情報を信頼するか」を判断する基準が、営業やマーケティングの常識とは異なるのです。DcardとPTTはAIが扱いやすい情報の形を備えているため、回答の骨格として繰り返し引用されます。
AIが情報源を選別するとき、主に見ているのは次の5点です。
生成エンジンは、大規模言語モデルが持つ知識と、その場で取得した複数の情報源を照合しながら回答を組み立てます。そこで重視されるのは、被リンク数やドメイン評価といった従来型SEOの指標だけではありません。「宣伝文句ではなく、実態を伝えているように見えるか」に近いシグナルです。アルゴリズムの俗説を追うより、こうした判断材料を理解するほうが実務に役立ちます。
- 取得・整理しやすい:コンテンツが公開され、強固な閲覧制限がなく、タイトルや段落の構造も明確です。モデルがそのまま引用できる箇所を切り出しやすくなっています。
- 情報が新しい:スレッドはほぼ毎日更新され、投稿日時も明示されています。エンジンは、3年間更新されていない静的なページより、最近の変化を反映した情報を優先する傾向があります。
- 一次体験の言葉がある:「実際に試した」「6か月使って失敗した」といった表現があれば、整えられた宣伝文ではなく、個人の実体験として読み取られます。
- 複数の情報源が相互に裏付ける:互いに独立した数十人の投稿者が似た結論を述べていれば、モデルは検証を経た一定の合意として扱います。
- 母語コンテンツの密度が高い:良質な中国語の一次情報はまだ限られており、その中でもDcardとPTTは最大級の情報量を持つため、相対的な重みが高まります。
この5点を合わせると、マーケティング担当者には受け入れにくい現実が見えてきます。時間と予算をかけた専用ページが、この基準ではPTTの3行の投稿に及ばないことがあるのです。公式ページの品質が低いからではありません。そこに書かれているのは「企業が信じてほしいこと」が中心であり、エンジンが探しているのは「人が実際に経験したこと」だからです。
なぜDcardとPTTは繰り返し引用されるのか
両サイトに共通するのは、圧倒的な投稿量、明確なタイムスタンプ、そして人間らしい語り口です。PTTには20年以上にわたる議論の蓄積があり、特定分野では掲示板そのものが有力な情報源になっています。現地の書き込みが、反対に市場の動きを左右することさえあります。「台湾の人はこれをどう考えているのか」という問いに答えるモデルにとって、ここには無視できないほど高密度のシグナルが集まっています。
さらに重要なのが、情報の構造です。タイトル、本文、推・噓による反応、返信で構成される投稿は、もともと質問と回答に近い形式になっています。モデルは要点を推測する必要がなく、情報を抽出するコストも極めて低くなります。一方、多くのブランド公式サイトでは、引用価値の高い利用条件や料金がカルーセル、操作が必要な要素、大きな画像の中に隠れています。これでは自ら引用候補から外れているようなものです。エンジンが読めない情報は、存在しないのと同じです。
Wikipedia、政府系サイト、台湾のローカルニュースが担う、もう一つの信頼性
フォーラムが「実体験の信頼性」を提供するなら、Wikipedia、.gov.twドメイン、台湾のローカルニュースが担うのは「事実の信頼性」です。設立年、業界規模、法令上の定義などを尋ねられた場合、エンジンは構造化され、多数の参照関係があり、改ざんしにくいこれらの情報源を優先します。質の高いAI回答は通常、フォーラムの実体験と、権威ある情報源が示す事実を組み合わせて構成されます。どちらか一方が欠ければ、回答は薄いものになります。

これはB2B・SaaSブランドにとって何を意味するのか
見込み顧客は今この瞬間にも、AIへ「Xは良いのか」「XとYならどちらが良いか」と尋ねています。しかし、その回答を組み立てる材料の多くに、あなたのブランドが含まれていない可能性があります。公式サイトのSEOが万全でも、Dcard、PTT、Wikipedia、業界ニュースに名前がなければ、AIにとって語れる情報がありません。ユーザーはあなたが存在しない回答を目にし、それを前提に比較し、商談や導入の候補を決めてしまいます。
よくある例を挙げます。台湾のあるHR SaaSは、公式サイト、資料、技術ブログを一通り整備していました。それでもAIに「台湾で使いやすい休暇管理システムのおすすめ」を尋ねると、回答には一度も登場しません。Dcardの関連掲示板やPTTの議論で言及されていなかったためです。一方、競合サービスは5年前の古い投稿を根拠に回答へ入りました。当のブランドは、比較候補にすら選ばれなかったのです。この差は、従来の検索順位ツールでは見えません。
こうした情報源に対して、ブランドは何をすべきか
近道はありません。ただし、進むべき方向は明確です。実体験を示す本物のシグナルを、適切な場所に積み上げることです。投稿数を水増しすることではありません。作為的な投稿は低品質と判断されやすく、増やすほどブランドへの信頼を損なうおそれがあります。
- 自社ドメインでは、形容詞中心の訴求をやめ、当事者の視点、具体的な数値、導入事例で事実を示します。エンジンが信頼しやすい実体験の要素をコンテンツに持たせましょう。
- ブランドに関する事実を、Wikipediaや業界メディアが引用できる水準まで整理します。明確な時系列、製品の定義、検証可能なマイルストーンが必要です。
- 実際のユーザーが普段利用しているコミュニティで、自発的に体験を共有できるよう促します。予算を投じた投稿ではなく、良い製品体験が自然な議論につながる状態を目指します。
- 自社カテゴリーについて、AIがどの情報源を引用し、自社が言及されているかを継続的に監視します。計測しなければ、どの施策が有効だったのかは推測の域を出ません。
推測をやめ、実態を可視化する
AIがどの情報源を引用しているか、台湾に関する回答に自社ブランドが何回登場し、どのように説明されているかは、感覚ではなく数値で把握できます。Dcard、PTT、Wikipedia、台湾のローカルニュースとの間にある可視性の差を確認して初めて、コンテンツや広報のリソースをどこへ配分すべきか判断できます。AIが自社をどう説明しているのか、どこに情報の空白があるのかを知りたい方は、TentenのAI可視性モニタリングをご検討ください。30分のGEO診断を直接予約いただければ、可視性のギャップを具体的に整理してご提示します。



