ChatGPTに「台湾のB2B向けスケジュール管理ソフトなら、どれがよいですか」と尋ねたところ、競合3社は挙がったのに、自社には一度も触れられなかった。これは通常、製品が劣っているという意味ではありません。モデルが利用できるデータの中に、自社に関する信頼性の高い根拠が少なすぎる、情報が整理されていない、あるいは情報とブランド名が正しく結び付いていない可能性があります。推奨されるかどうかは、まず根拠の勝負であり、製品そのものの評価はその次です。
選ばれない原因は、製品よりも「根拠」にある
大規模言語モデルが推奨回答を生成する際に参照する情報には、主に2つの層があります。学習時に取り込まれた公開情報と、その場で行われる検索です。後者には、たとえばChatGPTが検索して見つけたWebページが含まれます。どちらの層でも求められるのは、量があり、一貫性があり、複数の情報源で裏付けられたブランドシグナルです。競合が名前を挙げられやすいのは、レビューサイト、製品リスト、比較記事、コミュニティでの議論に繰り返し登場し、ブランド名、製品カテゴリ、訴求ポイントが明確に結び付いているからです。自社について語っているのが公式サイトだけならシグナルは弱く、モデルは自然と、より確信を持てるブランドを選びます。
つまり、モデルが自社を罰しているわけではありません。不確かな推奨を避けているのです。さまざまな場所で言及され、全体像を把握しやすいブランドを優先し、輪郭を十分に描けないブランドの名前を挙げるリスクは取りません。選ばれなかった理由を診断するうえで本質的なのは、自社に関する根拠がAIの目にどう映っているかを確かめることです。
ステップ1:AIの回答を再現する
憶測で判断してはいけません。実際の見込み顧客が尋ねそうな質問を3〜5種類用意し、一つずつAIに入力します。たとえば「中小企業に適した○○ツールにはどのような選択肢があり、それぞれどのような企業向けですか」といった質問です。回答ごとに、挙げられた企業、各社についての説明、引用されたリンクの3点を記録します。ChatGPTを検索モードで利用すれば参照先も表示されるため、その一覧自体が競合インテリジェンスになります。
次に、同じ質問をPerplexity、Gemini、GoogleのAI Overviewにも投げます。エンジンごとに検索対象となる情報源が異なるため、候補に挙がるブランドも変わります。どのエンジンにも自社が出てこないなら、問題は根拠となる情報源にある可能性が高いでしょう。一つのエンジンだけに出ないなら、そのエンジンが優先する特定のレビューサイトやフォーラムなどに、自社の情報がないと考えられます。
ステップ2:競合が選ばれた理由を分解する
AIに繰り返し挙げられる競合を2〜3社選び、その評価がどこから来ているのかを調べます。引用元は競合自身の公式サイトではなく、第三者のページであることが少なくありません。G2やCapterraなどのレビューサイト、メディアによるその年の「おすすめ○○」リスト、ブロガーの比較記事、Reddit、コミュニティでの議論などです。こうしたページは、ブランドにとって非常に重要な役割を果たします。その製品が何で、誰に向き、何に強いのかを第三者が裏付けてくれるからです。
ここまで整理すると、どの種類の情報源に差があるのかが見えてきます。レビューがないのか、リストに一度も掲載されていないのか、他社の比較記事に名前すら載っていないのか。このステップの目的は、不安をあおることではありません。「なぜAIに外されたのか」という漠然とした不満を、項目ごとに補強できる具体的なリストへ変えることです。

ステップ3:選ばれない5つの典型的な原因を確認する
競合の情報源を把握したら、それを手がかりに自社を一項目ずつ点検します。AIに選ばれないB2Bブランドの多くは、次のいずれかに該当します。複数が同時に当てはまるケースも珍しくありません。
- エンティティが不明確:ブランド名、製品名、カテゴリが一か所で明確に関連付けられておらず、モデルが「何を提供する企業なのか」「どのカテゴリに属するのか」を判断できません。
- 第三者による根拠が乏しい:レビューもリスト掲載もなく、ほとんど言及されていません。情報発信が公式サイトでの自己紹介に限られています。
- 内容を抽出できない:重要な回答が画像や動画、冗長な長文に埋もれています。モデルが明確に引用できる「質問と回答」の構造になっていません。
- 構造化タグが不足している:Organization、Product、FAQPageなどが設定されておらず、ページ内の事実を確認しにくい状態です。
- 名称に一貫性がない:公式サイト、ソーシャルアカウント、各種ディレクトリでブランド表記が統一されておらず、せっかく存在する少数のシグナルも分散しています。
この5項目に共通するのは、製品が「十分によくない」のではなく、AIにとってブランドの存在が十分に認識できる状態になっていないことです。幸い、どれも改善できます。第三者からの言及が増え、内容を抽出しやすくなり、同じ事実が繰り返し裏付けられていけば、モデルのブランドに対する確信度は上がっていきます。
一度きりの診断を、追跡可能な可視性指標に変える
一通り診断した後に最も起こりやすい失敗は、そこで計測をやめてしまうことです。AIの回答はコンテンツの更新や検索結果によって変化します。今月は名前が出ても、来月には変わるかもしれません。本当に必要なのは、「自社カテゴリについてAIがどのブランドを、何回挙げたか」を定期的に記録し、推移を確認できるShare of Voiceへ変えることです。TentenのBrand Radarは、主要なAIエンジンにおける自社と競合の指名率を定期的にモニタリングします。コンテンツや根拠への一つひとつの投資が、推奨回数の増加につながったかを確認できます。
まずは診断から始める
ChatGPTに見落とされることは、正体の分からない現象ではありません。現在AIがどう回答しているか、競合がなぜ選ばれているか、自社にはエンティティ、根拠、構造のどれが不足しているかという、具体的に検索・確認できる項目へ分解できます。まずはステップ1として、実際に使われそうな質問をいくつかのエンジンに投げてみてください。その一覧だけでも、改善の方向は見えてきます。自社にどのような差があり、何から補うべきかを明確にしたい方には、30分間のGEO診断をご用意しています。カテゴリに関する質問を一通り確認し、選ばれていない可能性が高い原因を特定します。


